泣かない男の子
「……だれ?」
僕がそうきくと、そのお姉さんは
「君に呼ばれて、来たんだよ」
っていった。でも僕はだれかをよんだつもりなんてなかった。お姉さんはゆっくりと僕に近づいてきて、手をつよくにぎって、顔を近づけて、僕の眼をのぞきこんで、僕は、その目にすいこまれるみたいで……
気が付いたら手がはなれてて、お姉さんは小さなビンにコルクで栓をしてた。お姉さんはそれをとても大事に大事にしながら、僕にわたしてくれた。
「哀しいことだって、忘れようとしたら、だめだよ。大切なんだから」
そういって笑って、でもお姉さんの目には涙がたまってた。僕はなにがなんだかわからないけど、つよくうなずいて、「ありがとう」って口から言葉が、とってもとっても自然にでた。
「忘れちゃだめだよ」
「うん」
もらったビン、家に帰って、宝箱にしまった。大切って、言われたし、たぶんそれは、ぼくもほんとうだと思ったから。
Last-modified: 2008-07-08 23:13:26 JST (182d)